出産までにかかる費用はいくら?内訳や自己負担額を抑えられる制度も解説

2026年9月4日公開 読了目安:10分
出産までにかかる費用はいくら?内訳や自己負担額を抑えられる制度も解説

妊娠中の方、あるいは今後子どもが欲しいと思っている方の中には、出産までにかかるお金についての不安がある方もいるのではないでしょうか。

出産費用は分娩方法や地域、利用する施設によって大きく変わりますが、一定の金額がかかります。一方で、出産育児一時金や高額療養費制度等、自己負担を軽くする公的な制度も数多く用意されています。

本記事では、出産までにかかる費用の平均や内訳、実際の自己負担額、そして活用できる助成・給付制度までをわかりやすく解説します。

出産までにはいくらの費用がかかる?

出産までにかかる費用は、妊婦健康診査から分娩、入院までを合わせると数十万円規模になります。まずは、出産費用の全国的な平均額と、施設や地域、分娩方法による違いから確認していきましょう。

出産までにかかる費用の全体平均

厚生労働省「出産費用の状況等について」によると、2024年度上半期の正常分娩でかかる費用の総額(妊婦合計負担額)は平均で58万9,794円となっています。この総額から、控除となる室料差額・産科医療補償制度の掛金・その他の費用を除いた金額が「出産費用」で、全国平均は51万7,952円です。

出産までにかかる費用の全体平均

出産費用は年々上昇が続いており、2022年度と比べて2024年度上半期は約3万6,000円高くなりました。

施設ごとの費用の平均

出産費用は、どの施設で出産するかによっても平均額が異なります。なかでも公的病院は費用を比較的抑えやすく、私的病院や助産所を含む診療所は、設備やサービスが充実している分、費用が高くなる傾向があります。

2024年度上半期の請求実績に基づいた、正常分娩における施設別の平均費用は以下のとおりです。

施設の種類 出産費用の平均(正常分娩)
全施設 51万7,952円
公的病院 48万1,764円
私的病院 53万6,671円
診療所(助産所を含む) 52万3,378円

どの形態の施設においても、出産にかかる費用は前年度の平均を上回る結果となっています。利用する施設を決める際は、金額だけでなく、提供されるケアの質や設備の充実度、通いやすさといった利便性も踏まえて、総合的に判断するのが望ましいでしょう。

都道府県ごとの平均

出産費用は、出産する地域によっても大きく変わります。2024年度上半期、都道府県別で最も高いのは東京都の64万6,203円、最も低いのは熊本県の40万2,255円です(全施設・正常分娩)。東京都と熊本県では、約24万円もの差があることになります。

自治体によっては独自の助成制度を設けている場合があるため、市区町村の窓口やWebサイトで確認しておきましょう。

分娩方法による費用の違い

主な分娩方法には、自然分娩・無痛分娩・帝王切開があり、それぞれ費用や保険の扱いが異なります。

無痛分娩の場合、麻酔の使用やそれに伴う分娩管理の費用が加算されるため、自然分娩よりも費用が高くなるのが一般的です。

しかし、一部の自治体では独自の支援策もあります。たとえば、東京都は2025年10月以降に出産し、対象医療機関や居住地などの要件を満たす場合、無痛分娩にかかる費用を最大10万円助成する制度を導入しています。

帝王切開等の異常分娩は公的医療保険が適用され、手術費や入院費は原則3割の自己負担です。ただし、個室利用時の差額ベッド代、食事代等は保険が適用されないため、別途自己負担が必要になる点には注意しましょう。

参照:東京都福祉局「妊娠・出産|無痛分娩費用の助成」
参照:厚生労働省「出産費用の状況等について」

出産までにかかる費用には何がある?

出産までにかかる費用は、分娩そのものの費用だけではありません。妊婦健診や検査、入院、さらにマタニティ用品やベビー用品の準備まで、さまざまな費用が積み重なります。
以下、主な費目ごとに、かかる費用の目安を見ていきましょう。

妊婦健診・検査にかかる費用

妊婦健診は、妊娠から出産までに14回程度受けるのが一般的です。市区町村に妊娠の届出をすると、費用の一部を公費で負担してもらえる受診票(補助券)が交付されます。

2024年4月における妊婦健診への公費負担額は、全国平均で10万9,730円です。ただし、助成額や対象となる検査の範囲は自治体によって異なります。

また、受診票の対象外の検査を受けた場合や、健診費用が助成額を上回った場合は、その差額が自己負担となります。

参照:こども家庭庁 「妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果について」

入院・分娩にかかる費用

入院・分娩にかかる費用は、出産費用の中でも大きな割合を占めます。前述のとおり、正常分娩か帝王切開かといった分娩方法の違いや、入院日数や処置の内容によっても金額は変わります。

厚生労働省によれば、2024年度上半期の正常分娩で発生する費用の全国平均内訳は以下のとおりです。

費目 平均額(正常分娩・全国)
入院料 12万5,671円
分娩料 30万6,327円
新生児管理保育料 5万1,887円
検査・薬剤料 1万6,308円
処置・手当料 1万7,759円
室料差額 1万9,732円
産科医療補償制度(掛金) 1万1,753円
その他 4万357円
合計(妊婦合計負担額) 58万9,794円

なかでも入院料と分娩料が大きく、この2つで全体の7割以上を占めています。帝王切開になった場合は、手術費等も加わります。

参照:厚生労働省「出産費用の状況等について」

マタニティ用品・ベビー用品にかかる費用

出産の準備には、マタニティ用品やベビー用品をそろえる費用もかかります。

妊娠期間中はマタニティウェアや専用の下着、ボディーケア用品等が必要です。出産が近づくと、ベビー服やおむつ、哺乳瓶といった赤ちゃんのための生活用品もそろえます。

株式会社赤ちゃん本舗が2024年に行ったアンケート調査によると、マタニティウェア・出産準備・育児グッズ等の購入で実際に購入にかかった金額が「10万円以上」と回答した方は全体の58.0%に達しています。

あらかじめ必要な品物をリストにまとめ、優先順位をつけて計画的に購入していくことで、支出を抑えやすくなるでしょう。

参照:株式会社赤ちゃん本舗「赤ちゃん本舗 ユーザーの声を中心とした報告」

出産までにかかる自己負担額はどのくらい?

出産時には、公的医療保険から「出産育児一時金」として原則50万円が支給されます。そのため、出産育児一時金を差し引いた金額が、実際の自己負担の目安となります。

2024年9月請求分の、室料差額やその他の費用まで含めた平均妊婦合計負担額と、出産育児一時金の平均支給額との差額は約9万円にのぼります。

実際、妊婦合計負担額が出産育児一時金の50万円を上回ったケースが、全国で80%を占めています。つまり、多くの場合は出産育児一時金だけではまかないきれず、数万円から10万円程度の自己負担が生じると考えておくと良いでしょう。

参照:厚生労働省「医療保険|出産育児一時金等について」
参照:厚生労働省「出産費用の状況等について」

出産までにかかる費用は保険適用される?

出産費用が保険適用になるかどうかは、分娩の状況によって変わります。正常分娩か、帝王切開等の異常分娩かによって、公的医療保険や民間保険での扱いが異なります。

それぞれのケースを見ていきましょう。

公的医療保険

正常分娩は病気やケガではないため、公的医療保険の対象外です。そのため、妊婦健診や正常分娩にかかる費用は、原則として全額自己負担となります。

一方、帝王切開や吸引分娩等の異常分娩では、医療行為が必要と判断された入院や手術は公的医療保険の対象になります。この場合の自己負担は原則3割です。

さらに、1か月の保険診療分の自己負担額が所得に応じた上限額を超えた場合は、高額療養費制度により、超過分の払い戻しを受けられます。

民間医療保険

民間の医療保険でも、出産に関わる費用が給付の対象になる場合があります。正常分娩は対象外となるのが一般的ですが、帝王切開等の異常分娩では、入院給付金や手術給付金を受け取れる可能性があります。

ただし、給付の有無や金額は、加入している保険の契約内容によって異なります。現状の医療保険の保障内容を確認しておくと安心です。

もし保障が十分ではなく、別の民間医療保険に加入したいと考えている場合、妊娠中は新たに加入できる保険が限られることもあります。加入条件を確認したうえで検討しましょう。

出産までにかかる費用の自己負担を減らせる補助金・助成制度

出産にかかる費用の負担を軽くするために、さまざまな公的制度が用意されています。妊婦健診の助成から、出産後に受け取れる給付金まで、代表的な制度を確認しておきましょう。

  1. 妊婦健診の助成
  2. 高額療養費制度
  3. 医療費控除
  4. 出産育児一時金
  5. 出産手当金
  6. 育児休業給付金

対象になる制度は早めに把握し、申請もれがないように準備することが大切です。

妊婦健診の助成

妊婦健診の助成は、自治体に妊娠届を提出すると受けられる、最も身近な支援です。自治体から交付される受診票や補助券を活用すれば、妊婦健診にかかる費用の一部は公費助成を受けられます。2024年4月時点での妊婦1人当たりの公費負担額は、全国平均で10万9,730円です。

助成内容は自治体によって差があるため、お住まいの市区町村で確認しておきましょう。

項目 内容
主な対象者 妊娠の届出をした妊婦
給付・助成内容 14回程度の妊婦健診費用の一部を公費で助成(受診票の交付)
※自治体による
手続き・申請先 お住まいの市区町村(窓口・保健センター)
手続き・申請時期 妊娠がわかり、妊娠届を提出するとき

参照:こども家庭庁 「妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果について」

高額療養費制度

高額療養費制度は、1か月間に支払った医療費の自己負担額が一定の基準を超えた際、超過分の払い戻しを受けられる仕組みです。

出産においては、前述のとおり帝王切開等の異常分娩によって保険診療の対象となる費用が高額になった場合に、この制度の適用を受けられます。

マイナ保険証を利用すれば、限度額適用認定証の事前申請等の手間がなく、窓口での支払いが自己負担限度額までとなります。

項目 内容
主な対象者 公的医療保険の加入者で、1か月の自己負担が上限額を超えた方
給付・助成内容 上限額を超えた分を払い戻し
(年収約370万〜770万円の場合、1か月の上限は8万100円+αが目安)
手続き・申請先 加入している公的医療保険
(協会けんぽ・健康保険組合・市区町村等)
手続き・申請時期 診療を受けた月の翌月以降
(事前に限度額適用認定証の申請も可能)

参照:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

医療費控除

医療費控除とは、1年間(1〜12月)に支払った医療費の総額が一定の基準を超えた際に、所得控除を受けることで税負担を軽減できる制度です。この制度は妊娠や出産に伴う費用も広く対象としており、税負担を抑えるうえで有効です。

妊婦健診や通院のための交通費、分娩・入院費等も対象になります。税務署から求められた場合に備え、領収書は大切に保管しておきましょう。

項目 内容
主な対象者 1年間(1〜12月)の医療費の自己負担が原則10万円を超えた方
給付・助成内容 超えた分を所得から差し引くため、所得税・住民税が軽くなる
手続き・申請先 住んでいる地域を管轄する税務署(確定申告)
手続き・申請時期 医療費がかかった年の翌年〜最長5年まで遡って申告可能

参照:国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問)|No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例」

出産育児一時金

出産育児一時金は、出産したときに公的医療保険制度から支給される一時金です。直接支払制度を使うことで、一時金が医療機関へ直接支払われ、窓口で支払う金額を抑えられます。

項目 内容
主な対象者 公的医療保険の加入者・被扶養者で出産した方
給付・助成内容 子ども1人につき原則50万円
(産科医療補償制度の対象外の出産は48万8,000円)
手続き・申請先 加入している公的医療保険
(直接支払制度を利用する場合は医療機関を通じて手続き)
手続き・申請時期 出産後

参照:厚生労働省「医療保険|出産育児一時金等について」

出産手当金

出産手当金とは、出産のために仕事を休み、その間に給与の支払いを受けなかったまたは給与が出産手当金の額より少ない場合に一定期間支給される手当です。受給対象となるのは、勤務先の健康保険に加入している会社員等の被保険者本人に限られます。

支給対象期間は、出産日以前42日(多胎妊娠は98日)から、出産の翌日以後56日目までです。

項目 内容
主な対象者 健康保険の被保険者で、産前産後休業中に給与が支払われない方
給付・助成内容 支給開始日の以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 2/3を支給
手続き・申請先 加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合等)
手続き・申請時期 産休後

参照:全国健康保険協会(協会けんぽ)「出産手当金」

育児休業給付金

育児休業給付金は、雇用保険の被保険者が1歳未満の子を養育するために育休を取得した際に受け取れる給付金です。給付を受けるには一定の要件を満たす必要があります。

2025年4月からは、両親がともに育休を取得する場合等に給付を上乗せする「出生後休業支援給付金」も始まっています。ただし、給付額には上限があり、休業中に賃金が支払われる場合は減額されることもあります。

項目 内容
主な対象者 雇用保険の被保険者で、育児休業を取得する方
(一定の就労要件あり)
給付・助成内容 休業開始時賃金日額×支給日数×67%
(育児休業開始から181日目以降は50%)
手続き・申請先 事業所を管轄するハローワーク(勤務先を通じて申請)
手続き・申請時期 育児休業の開始後(原則2か月ごとに申請)

参照:厚生労働省「雇用保険制度|育児休業等給付について」

出産までにかかる費用が払えないときは?

まとまった出産費用の用意が困難なケースでも、負担を軽減できる仕組みがあります。

その代表例が「出産費貸付制度」です。この制度を利用すれば、協会けんぽ等を通じて、被保険者または被扶養者が出産育児一時金の見込額の8割を上限とした無利子の融資を受けることが可能です。貸付けの対象としては、出産予定日まで1か月以内の方、あるいは妊娠4か月(85日)以上で医療機関への支払いが必要になった方が挙げられます。

また、自己負担額が大きい場合は、早めに家族や親戚へ費用面の相談をしておくのも1つの手段でしょう。

現在妊娠中の方や将来的に出産を希望されている方は、医療保険の見直しを含め、早期から準備を整えておくことで、万一の際も落ち着いて対応できます。

参照:全国健康保険協会(協会けんぽ)「出産育児一時金|出産費貸付制度」

出産までにかかる費用についてのよくある質問

出産費用について、多くの方が気になりやすい疑問をまとめました。
それぞれ簡潔にお答えします。

出産までにかかる費用の平均はいくらですか?

厚生労働省「出産費用の状況等について」によると、「出産費用」の全国平均は51万7,952円です。実際に発生する費用は、施設や地域、分娩方法等によって異なります。

参照:厚生労働省「出産費用の状況等について」

出産までにかかる費用には保険が適用されますか?

帝王切開などの異常分娩の場合、入院や手術が公的医療保険の対象になる場合があります。民間の医療保険の対象となるかどうかについては、商品や加入条件によるため、加入中の保険について確認しておきましょう。

出産までにかかる費用の自己負担を減らすことはできますか?

助成や控除、給付金などの公的制度によって自己負担を抑えられるケースがあります。具体的には以下のような補助金・制度が挙げられます。

  1. 妊婦健診の助成
  2. 高額療養費制度
  3. 医療費控除
  4. 出産育児一時金
  5. 出産手当金
  6. 育児休業給付金

それぞれの費用はいつ支払うことになりますか?

妊婦健診の費用は、受診の都度、会計窓口で支払います。入院・分娩費用は、退院時に一括精算するケースが大半です。マタニティ用品やベビー用品は、妊娠中から必要に応じて順次そろえていくことになるでしょう。

不妊治療にはどの程度の費用がかかりますか?

不妊治療費は治療段階で異なり、2022年4月からの保険適用拡大により、現在は原則3割負担で受診できます。

一般不妊治療(タイミング法・人工授精)は1回数千〜数万円が目安ですが、生殖補助医療(体外受精・顕微授精)は保険適用後でも1回十数万円かかる場合があります。

参照:厚生労働省「子ども・子育て支援|不妊治療に関する取組」

出産までにかかる費用は自己負担額と使える制度を確認して準備しよう

出産までにかかる費用は、正常分娩の全国平均で51万7,952円となっており、地域や施設によっても差があります。

出産育児一時金や高額療養費制度等の公的な支援を活用すれば、自己負担を抑えられます。
一方で、公的支援だけではまかないきれず、数万円から10万円程度の自己負担が生じるケースも少なくありません。

安心して妊娠・出産期を過ごすためにも、事前に制度を調べ、余裕を持った資金計画を立てるとともに、加入している民間の医療保険の保障内容も見直しておきましょう。

石野恒正

監修者

石野恒正

外資系生命保険会社の営業として、多くの家庭のライフプランの作成や保険の見直しサポート、新規提案などを経験。現在は独立し、生命保険、医療保険、社会保障制度をはじめとする豊富な知識に加え、自身の資産運用の経験を活かしながら、金融関連記事の執筆や監修などを行っている。

石野恒正

監修者

石野恒正

外資系生命保険会社の営業として、多くの家庭のライフプランの作成や保険の見直しサポート、新規提案などを経験。現在は独立し、生命保険、医療保険、社会保障制度をはじめとする豊富な知識に加え、自身の資産運用の経験を活かしながら、金融関連記事の執筆や監修などを行っている。

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