遺伝性網膜ジストロフィーとは、遺伝子変異によって、網膜色素変性をはじめとする網膜の機能に進行性の障害が現れる病気の総称です。網膜色素変性は国の指定難病であり、暗いところでものが見えにくくなる「夜盲」、視野が狭くなる「視野狭窄」などの症状から進行して、視力低下や色覚異常が生じます。場合によっては、失明の恐れもあります。
遺伝性網膜ジストロフィーの原因遺伝子はこれまでの研究によりに300近くが明らかになっており、医療現場から原因遺伝子に基づく情報も増えつつあり、遺伝子に的を絞った治療の開発が進んでいます。
この先進医療は、これまで研究されてきた遺伝性網膜ジストロフィーに対する遺伝子解析を遺伝子検査として整備して実施し、検査結果に基づく医療を提供するものです。
遺伝子パネル検査とは、一度に複数の遺伝子を調べることができる新しい遺伝子検査のことです。あらかじめ、遺伝カウンセリングによって同意を得た患者さんに対し、採血によって行われます。血液からDNAを抽出し、原因遺伝子の可能性がある82の遺伝子の異常を解析します。さらに遺伝子検査の結果を、エキスパートパネルと呼ばれる専門家たちによる協議会で検討し、特定した原因遺伝子により患者さんに合わせた治療計画を策定します。
この先進医療によって、患者さんに合わせた、より的確な遺伝カウンセリングが行えるようになり、視覚に障害がある人にさまざまな方面から支援を行うロービジョンケアを含む治療計画が策定・実行されていくことになります。これにより、患者さんのQOL(生活の質)の向上につながることが期待されます。 |