がんの薬物療法では、抗がん薬を点滴で静脈に注入するのが一般的です。しかし、この方法では、抗がん薬が標的のがんだけでなく全身に回ってしまい、全身に副作用をおこすおそれがあり、抗がん薬の濃度を高くすることができません。 この先進医療は、標的とするがん(子宮頸がん)が位置する骨盤内だけに抗がん薬が行き渡るようにして、全身におこる副作用のリスクを抑え、その分高濃度の抗がん薬を使ってがんを治療する療法です。 まず、血管内で風船のようなものを膨らませたり、太ももを強く締めたりして、骨盤内に入ってくる血流も出ていく血流も止めます。そのうえで、ポンプを使って抗がん薬のシスプラチンを骨盤内の血管に注入して子宮頸がんに届かせ、別のポンプで吸引して、30分間循環させます。骨盤内からほとんど漏れ出ることなく抗がん薬を注入できるため、点滴による一般的な方法の約2倍の濃度の抗がん薬を投与できます。治療後は人工透析により、骨盤内の抗がん薬を除去します。 抗がん薬が全身に広がる従来の治療では、子宮頸がんが再々発した場合、生存期間の中央値は6.7カ月でしたが、この先進医療を使った海外のデータでは25.1カ月となっています。高濃度の抗がん薬を使って薬剤の血中濃度を高めることで、再発した子宮頸がんに対する治療効果の向上が期待されます。 |