胃や腸など、腹部の臓器は腹膜という膜に包まれています。膵臓を含め、腹部の臓器にできたがんが、臓器の壁を突き破ってしまった場合、腹膜の中に、種をまいたようにがん細胞が飛び散ってしまうことがあります。これが腹膜播種です。腹膜播種があると、抗がん薬を内服したり血管に注入するだけでは、治療効果が出にくいとされています。 この先進医療では、抗がん薬のゲムシタビンとナブ-パクリタキセルをどちらも点滴で静脈内に投与し、さらに抗がん薬のパクリタキセルを腹腔内、すなわち腹膜の中に点滴で投与します。腹腔内に抗がん薬を直接投与することで、腹膜の中に飛び散ったがん細胞にも薬の成分が届きやすくなります。
従来の治療法であるゲムシタビン単独投与に比べて、ゲムシタビンとナブ-パクリタキセルを併用すると治療効果が上がるとされています。パクリタキセルの腹腔内投与とほかの抗がん薬との併用でも治療成績の向上が報告されています。
一方、膵臓がんは早期発見が難しく、切除手術の適応とならない状態で見つかることが多いのが実情です。このため、抗がん薬などの薬剤による治療にいっそう大きな期待がかかっています。この先進医療による「ゲムシタビンとナブ‐パクリタキセルの静脈内投与」「パクリタキセルの腹腔内投与」の併用で、従来の治療法に比べて生存期間の延長やQOL(生活の質)の改善をはじめとする治療成績の向上が期待されます。 |