胃壁は、内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)下層、漿膜の5層に分かれています。胃の粘膜から発生する胃がんとは異なり、胃の粘膜の下にできた腫瘍を総称して「胃粘膜下腫瘍」と呼びます。
胃粘膜下腫瘍は良性のものと悪性のものがあり、悪性の可能性が高い場合には、開腹手術や、腹部に小さな穴を開けて行う腹腔鏡手術によって腫瘍の切除を行います。これらの手術は、胃の外側から腫瘍の正確な位置を把握することが困難なため、胃壁を大きめに切除する必要があります。
その問題点を解消するため、近年、腹部から挿入した腹腔鏡と、口から挿入した内視鏡を用いて、胃の内外から腫瘍と胃壁を全層切除し、腹腔鏡で傷口を縫合する手術(腹腔鏡・内視鏡合同手術)が開発され、健康保険が適用されるようになりました。
この先進医療では、長径1.1cm以上、かつ3cm以下の胃粘膜下腫瘍に対して、口から挿入した内視鏡のみを用いて腫瘍を切除します。腫瘍が胃壁の浅い層にある場合は腫瘍の切除のみを行い、腫瘍が胃壁の深い層にある場合は腫瘍とともに胃壁を全層切除し、傷口の縫合も内視鏡で行います。腫瘍の切除から縫合までの過程を内視鏡で行うため、開腹手術や腹腔鏡手術のように体表に傷をつけることがなく、切除する胃壁の範囲も最小限にとどめられます。この先進医療により、胃粘膜下腫瘍の患者さんの体にかかる負担が軽減されることが期待されます。 |