急性呼吸窮迫症候群とは、重症肺炎や敗血症、外傷などにより重度の呼吸不全を招く病気の総称です。急性呼吸窮迫症候群の患者さんは、人工呼吸器の管理にある場合でも、努力呼吸が生じることがあります。努力呼吸とは通常の呼吸筋(外肋間筋や横隔膜)だけでは呼吸が困難なときに、呼吸補助筋も働かせて行う呼吸のことです。
努力呼吸の換気量が一定量以上になると、肺に障害を起こすおそれがあり、一定量以下に抑えることが肺の保護(肺保護換気)につながります。そこで、人工呼吸器管理下では努力呼吸を起こしにくくする鎮静薬が使用されますが、従来の鎮静薬では最大量を投与しても、一定量以上の換気量の努力呼吸が生じるケースがありました。
この先進医療は、従来の鎮静薬では人工呼吸器管理下で一定量以上の換気量の努力呼吸が生じる急性呼吸窮迫症候群の患者さんに、全身麻酔で使用される鎮静薬のセボフルランを吸入で投与する療法です。セボフルランは呼吸を抑える作用や軽い筋弛緩作用があるとされ、液体の薬剤であるため人工呼吸器に装着した簡易気化器で気化させて患者さんに投与します。
この先進医療によって努力呼吸の換気量が減少し、肺保護換気が可能になることで全身の状態の改善につながることが期待されます。 |