手術後や重症疾患の場合、高齢者はせん妄を発症することが少なくありません。せん妄とは、ぼんやりとしている、もうろうとして話のつじつまが合わない、日時や場所、家族がわからなくなる、といった精神症状を起こし、ときには幻視や妄想なども伴うことがある病態をいいます。特に、がんの手術前後などにせん妄が起こると、がんの治療成績の低下や看護の負担が大きくなるなどのデメリットにもつながります。
この先進医療は、せん妄の発症抑制のためにラメルテオンという不眠症の治療薬を用いる治療法です。がんの手術の前後にラメルテオンを1日1回(計9回から13回)、就寝前に経口もしくは経鼻胃管(けいびいかん)から投与します。ラメルテオンは、不眠症の改善だけでなく抗炎症作用が期待される薬剤であり、せん妄抑制に効果があると考えられています。
適応となるのはがんの手術をした患者さんで、せん妄のリスクが高い65歳以上の高齢者です。
この先進医療により、がんの手術後にせん妄の発症割合が減少することで、がんの治療成績の向上や医療負担の軽減につながることが期待されます。 |