全身性強皮症は、皮膚やさまざまな臓器にコラーゲンなどの線維物質が過剰に蓄積することにより、皮膚や臓器が硬くなって障害が起こる病気で、血流障害などが起こります。本来、自分の体を守るためのしくみである免疫の異常によって、コラーゲンなどが含まれる自分自身の膠原(こうげん)線維(細胞と細胞を結びつける組織)を攻撃してしまう自己免疫疾患・膠原病の一つであり、難病に指定されています。
全身性強皮症のうち、全身に及ぶ重度の皮膚硬化や内臓病変を伴う重症例では、治癒の目安となる5年生存率が50〜60%にとどまり、皮膚の硬化や呼吸困難によってQOL(生活の質)は著しく低下しているのが現状です。
この先進医療は、ステロイドやステロイド以外の免疫抑制薬が効きにくい全身性強皮症に対して、血液疾患には以前から行われてきた、血液をつくる自家末梢血幹細胞を移植する療法を応用するものです。具体的には、免疫抑制薬のシクロホスファミドなどを静脈から投与したうえで、採血して自家末梢血幹細胞を取り出します。そして、異常な免疫反応を起こす血液成分を除去する処置をしたうえで保存します。次いで大量のシクロホスファミドを静脈から投与して体内のすべての免疫反応を抑えたうえで、処置によって正常な免疫反応を示すようにした自家末梢血幹細胞を静脈注射で移植します。
自分の体を守る免疫の働きを再構築することで、全身性強皮症の治癒やほとんど自覚症状がない状態である寛解(かんかい)の実現といった治療効果の向上が期待されます。 |