前立腺がんの約90%はがんが前立腺の周辺のみに広がり、離れた臓器に転移していない前立腺に限局しているがんです。それに対する現在の標準治療は、手術で前立腺全体を摘出するか、前立腺全体に放射線を照射する根治的治療です。ロボット支援下根治的前立腺摘除術も有効とされ、すでに保険診療となっています。
しかし、前立腺全体に対する治療では、前立腺周辺に排尿にかかわる尿道括約筋(にょうどうかつやくきん)や、勃起にかかわる勃起神経が位置していることなどから、排尿障害(尿失禁)や性機能障害(勃起・射精障害)を生じやすいことが報告されています。
この先進医療は限局性の前立腺がんを適応症として、集束させた強力な超音波による高熱(70〜100℃)でがんを焼き固めて壊死させる治療法であり、高密度焦点式超音波療法(HIFU:ハイフ)と呼ばれます。
集束超音波を照射する治療装置は焦点域をターゲットとし、がんやその周囲組織のみを集中的に治療できるため、周りの筋肉や神経などの正常組織の温存が可能になります。
この先進医療によって、標準治療と同等の5年無再発生存率を得られ、さらに排尿機能や性機能にかかわる合併症が抑制されることが期待されます。 |