潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜の慢性的な炎症で、粘膜にただれや、潰瘍(かいよう)ができる病気であり、国の指定難病のひとつです。病変が広がる範囲によって直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型の3つに分けられます。左側大腸炎型と全大腸炎型には局所のステロイド投与を用いることができず、経口投与となるため副作用が起こりやすいなど、治療法の選択肢が限られることから、新たな治療法が望まれています。
細菌の集まりを細菌叢(さいきんそう)といい、健康な人のバランスのとれた腸内細菌叢の移植が潰瘍性大腸炎の治療につながるのではないかと考えられています。この先進医療は、アモキシシリン、ホスホマイシン、メトロニダゾールという3種類の内服の抗菌薬を投与した患者さんの大腸内に、健康な人の便の腸内細菌叢(糞便微生物叢)溶液を注入して移植する療法です。適応症は、左側大腸炎型と全大腸炎型の軽症から中等症までです。事前に抗菌薬を使うのは、抗菌薬によって大腸内を無菌状態に近づけることで、移植する健康な人の腸内細菌叢が定着しやすくなるからです。
この先進医療で患者さんの腸内細菌叢を改善し、寛解(かんかい:腹痛や下痢、血便などの症状を日常生活に支障をきたすことがない程度までに抑えられた状態)の割合増加や病気の進行抑制効果の向上が期待されます。 |