間葉系細胞(かんようけいさいぼう)は、生体の分化のもとになる幹細胞の1つで、体のいろいろな組織から採取できますが、骨髄から採取した間葉系細胞は血管になる能力をもっています。骨髄の間葉系細胞を移植することで、移植した部位では血管が新生して血流が促進される効果が期待できます。しかし、骨髄中の間葉系細胞はわずかであり、治療効果を得るためには大量の骨髄採取が必要です。
そのため、細胞を培養して治療に用いる研究が進められています。培養には通常、人間以外の動物由来の試薬が用いられていますが、拒絶反応など安全性の問題がありました。
この先進医療は、患者さん自身の骨髄から取り出した間葉系細胞を、患者さん自身の血液由来の多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)で培養したのちに、血流が滞った部位の筋肉に注射して移植し、血管新生を促す治療法です。
適応症は、手足の血管の動脈硬化により末梢の血流が滞る閉塞性動脈硬化症のうち、カテーテル治療やバイパス術など従来の治療では血流の改善が困難な重症の患者さんです(フォンタン分類とは、重症度を4段階に分けた指標です)。
この先進医療によって、移植した部位の血流が改善され、血流の滞りによる組織障害や壊死が軽減されることが期待されます。そのうえ、患者さんから採取する骨髄が少量ですむため体への負担が減り、拒絶反応も避けられることから安全性も高まります。 |