肺の最上部の肺尖部から周囲の胸壁にまでがんが広がったのが、肺尖部胸壁浸潤がんです。肺尖部胸壁浸潤がんは、一番上にある肋骨、その周囲の血管や神経、さらには脊椎に広がりやすいため、手術ですべてを切除することが難しく、治療が困難ながんとして知られています。
現在の標準治療は、切除可能な場合には、手術前に抗がん薬による化学療法と放射線療法を行います。一方、切除ができない場合には、化学療法と放射線療法を併用した後、デュルバルマブという免疫チェックポイント阻害薬を用います。免疫チェックポイント阻害薬は、人の免疫細胞の働きを抑えているがん細胞の作用を妨げて、免疫細胞が十分にがん細胞を攻撃できるようにする薬です。これらの治療を行っても、半数以上の患者さんでがんの進行を抑えられず、長期の延命も難しいと言われています。
この先進医療では、手術前の化学療法と放射線療法に加えて、手術の前後(周術期)にデュルバルマブを投与します。また、手術前のデュルバルマブ療法の後で手術ができないと判断された場合は、追加でデュルバルマブを投与します。
デュルバルマブを追加することで治療効果が向上し、生存期間の延長につながることが期待されます。 |