神経病変のために、排尿に関わる膀胱の筋肉である排尿筋が過度に収縮する状態が続くと、尿が膀胱に一定以上たまらないうちに尿意を感じる頻尿や、尿失禁などが起こります。この神経因性排尿筋過活動(NDO)による膀胱機能障害に対して、従来は排尿筋の過度な働きを抑える抗コリン薬という内服薬が使われてきましたが、効果が十分ではないケースもみられました。また、手術で膀胱を拡大する治療法もありますが、体への負担が大きくなりがちです。
この先進医療は、小児のNDO患者に対して、先端にカメラや注射針などが付いた膀胱鏡を尿道から膀胱まで入れ、排尿筋にボツリヌス毒素という薬剤を注射する治療法です。この治療法は、成人に対しては国内外で有効性や安全性を示すデータが出ています。ボツリヌス毒素には筋肉の緊張を緩める働きがあることから、排尿筋の過剰な活動を抑え、頻尿や尿失禁などの改善につながると考えられています。
この先進医療の対象となるのは、5歳以上18歳未満、1日2回以上の尿失禁がある日が週5日以上ある、1種類以上の抗コリン薬の内服では症状が制御できない、などに該当する場合です。
この先進医療により、頻尿や尿失禁などの症状改善、抗コリン薬の減量・中止、さらには、体への負担が大きい手術を回避し、長期的に腎機能が保持されることが期待されます。 |