「足の動脈硬化症」とも呼ばれる下肢閉塞性動脈硬化症にかかると、足の血管が狭くなったり詰まったりして、慢性の血行障害が生じます。すると、足に栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなり、足先が冷たくなったり、足に痛みが出たりするほか、潰瘍(かいよう)や壊死(えし)を引き起こす恐れもあります。
こうした状態は慢性重症下肢虚血(まんせいじゅうしょうかしきょけつ)と呼ばれ、潰瘍や壊死が進行し、感染症防止などのために足の切断を余儀なくされる場合があります。慢性重症下肢虚血は、失われた腎臓の働きを補うための人工透析(維持透析)治療を受けている患者さんに起こりやすいとされています。
慢性重症下肢虚血に対してはこれまで、薬物療法で症状が改善しない場合には、血管を広げたり、血管にバイパスをつけたりする血行再建術が実施され、一定の効果を上げてきました。しかし、血行再建術ができないほど重症化した場合は、足の切断に至ることが少なくありません。
この先進医療は、患者さんから採取した血液から、血管を形成する細胞になる能力をもつとされるCD34陽性細胞を取り出し、血行障害が生じている足に筋肉注射で同細胞を移植して、足の血管を再生させる療法です。人工透析治療を受けていて、下肢閉塞性動脈硬化症による重い血行障害がみられる患者さんが対象になります。
足の血管の再生により血流を回復させることで、下肢閉塞性動脈硬化症に伴う痛みや潰瘍の改善、さらには壊死や足の切断の回避などが期待されます。 |