変形性膝関節症は、加齢や肥満などにより膝関節の軟骨表面がすり減り変形して、膝に痛みが出るために曲げ伸ばしが難しくなる病気です。しかも軟骨組織には血管や神経などが存在しないため、欠損した軟骨が自然に修復されることはありません。このため、本来の適応ではない治療法で対処されているのが現状です。
この先進医療は、変形性膝関節症のなかでも高位脛骨(けいこつ)骨切り術の適応となる患者が対象となり、同手術に加えて行われます。高位脛骨骨切り術とは、すねの骨(脛骨)のなかでも膝関節近く(高位)の内側の一部を切って開き、そこに人工骨を入れて金属で固定する手術です。この手術により膝関節の内側が伸びることで変形性膝関節症に多いO(オー)脚がまっすぐ伸び、膝関節への負荷が軽減されます。
この手術の前に、関節内に挿入する内視鏡である関節鏡を使って軟骨の欠損を確認したうえで、軟骨組織と、関節をおおっている滑膜(かつまく)の組織を採取します。これらの関節組織は細胞培養の専門施設へ運ばれて3〜4週間培養し、膝軟骨と同様の働きをする軟骨細胞シートをつくります。
そして、高位脛骨骨切り術の際に、膝軟骨の欠損部分をおおうようにこの軟骨細胞シートを移植します。術後約1カ月入院することになりますが、入院期間は高位脛骨骨切り術だけを受けた場合とほとんど変わりません。
軟骨の機能の多くは、軟骨のなかでも硝子軟骨が担っており、硝子軟骨の再生が治療成功のカギとなります。これまでの臨床研究では、全例で安全性や痛みなどの症状の改善、関節機能の改善が確認され、硝子軟骨による膝軟骨の修復・再生も確認されており、この先進医療で膝関節の痛みの緩和や膝関節本来の機能の回復などが期待されます。 |