肝臓がんといえば、ほとんど肝細胞がんのことです。肝細胞がんの長径が3cmを超えており、かつ、単独で発生した肝細胞がんの標準的な治療は、手術で切除する方法です。しかし、治癒の目安となる5年生存率は約55%と、あまり高くありません。肝炎や肝硬変がある患者さんが多く、一旦がんを切除できても再発しやすいことが一因とされています。
また、肝細胞がんと診断された場合、同時に肝臓の機能低下や消化管の異常などが進みやすいため、肝細胞がん以外の原因で死亡する可能性が高いといわれています。このため、がん治療では患者さんの体の負担をできるだけ軽減し、がん以外の病気の治療を受けられるだけの体力を温存しておくことが望まれます。
この先進医療は、根治切除が可能な肝細胞がんの患者さんに対して、陽子線による治療を行うものです。放射線の一種である陽子線は、一般的な放射線治療で使われるエックス線に比べて、はるかに大きな力で、しかもがんをピンポイントに死滅させられるのが特徴です。過去の報告では、単独で発生し、肝機能が良好な肝細胞がんに対する陽子線治療での5年生存率は約54%であり、手術での切除治療とほぼ同じでした。
また、長径5cm以下の肝細胞がんには、多方向から放射線を照射させる定位放射線治療が公的医療保険で受けられます。この治療法では、狙うがんが大きいほど正常細胞への放射線照射も多くなりがちなため、長径が3cm以上なら、正常細胞へのダメージが最小限に抑えられる陽子線治療のほうが、より有望な治療選択肢になるとされています。
陽子線治療によって、患者さんの体の負担を抑えつつ、手術での切除に劣らない生存期間の延長など、治療効果の向上が期待されます。 |